ボルボV60（FB/FD型）は、2011年に登場した初代V60シリーズで、ボルボがこれまで築いてきた「実用重視のステーションワゴン像」を大きく進化させた、スポーツ志向のプレミアム・ワゴンです。セダンのS60をベースに開発され、「走り」「デザイン」「安全性」の三要素を高いレベルで融合したこのモデルは、都市型ワゴンとしての新しいスタンダードを提示しました。

エクステリアは、従来のスクエアなボルボ・ワゴンの印象を覆す、流れるようなルーフラインと躍動感のあるプロポーションが特徴。クーペのようなシルエットながらも、実用的なラゲッジスペースを確保しており、美しさと使い勝手を両立しています。前期型はクラシカルな雰囲気を、後期型（2014年〜）ではシャープなLEDライトやグリルデザインにより、より現代的で洗練された印象へと進化しました。

インテリアは、北欧らしいミニマルなデザインと上質な素材使いが融合した空間。フローティング構造のセンターコンソールやシンプルで直感的なスイッチ配置など、視覚的にも操作性の面でも優れた仕上がりです。リアシートはややタイトですが、乗員4人での使用を前提とした際には快適性も高く、都会的なライフスタイルに適した設計と言えます。

パワートレインは非常に多彩で、直列5気筒のガソリン、ディーゼル（D4）、後期型では高効率な直列4気筒ターボの「Drive-E」エンジンも採用。加えて、高性能モデル「V60 Polestar（350ps）」といった意欲的なグレードも用意されました。駆動方式はFFが主流ながら、一部にAWDモデルも設定されています。

安全性能はボルボの真骨頂であり、「シティ・セーフティ（自動ブレーキ）」をはじめ、歩行者検知機能付き自動ブレーキ、BLIS（死角情報システム）、ACC（アダプティブ・クルーズ・コントロール）、車線逸脱警報など、当時としては最高水準の運転支援技術を搭載。プレミアムワゴンとしての信頼性と安心感を支える重要な要素でした。

先代V60（FB/FD型）は、ボルボが“実用車”の枠を超え、走りと美しさを兼ね備えたライフスタイル・ワゴンへとシフトするきっかけとなった革新的モデルです。長く使える堅牢性、独自の個性、そして時代に先んじた安全性によって、今なお多くのオーナーに愛され続けています。