初代ボルボV70（型式8B）は、1996年に登場したボルボのプレミアムステーションワゴンで、名車「850エステート」の後継として開発されたモデルです。850の基本設計を継承しつつ、快適性・静粛性・安全性の向上を図り、より洗練された乗用車として進化を遂げました。「V」は「Versatility（多用途性）」を意味し、まさに実用性と上質さを兼ね備えた“北欧流ステーションワゴン”の礎を築いた1台です。

エクステリアは、850から大きく形を変えることなく、ボディ各部に丸みを持たせたリファインが施され、より現代的で優雅な印象へと変化しました。スクエアで直線的なボルボらしい佇まいはそのままに、ディテールの質感向上によって上品さを高めています。縦型テールランプや大型のリアゲートなど、ワゴンとしての実用性を重視した設計も受け継がれています。

インテリアは、上質な素材と堅牢なつくりを基調としつつ、スカンジナビアらしいシンプルで機能的なレイアウトを採用。人間工学に基づいた快適なシートと、広くフラットなラゲッジスペースにより、長距離移動でも疲れにくく、日常使いから旅行・レジャーまで幅広く対応できる設計となっています。

パワートレインは、2.4L直列5気筒の自然吸気エンジン（140ps／170ps）を中心に、ターボ仕様（2.4T、T-5）や高性能モデル「V70R」もラインアップ。高トルクで独特のサウンドを奏でる5気筒エンジンは、ボルボならではの個性のひとつです。駆動方式はFFが基本ですが、一部グレードにはフルタイムAWDも設定されました。

安全性能についても、SIPS（側面衝突保護システム）、WHIPS（むち打ち軽減機構）、デュアルエアバッグなど、当時としては非常に高い水準の装備を誇り、ボルボが「世界一安全なクルマ」と評されるゆえんを感じさせる内容となっています。

初代V70は、クラシカルな雰囲気とボルボらしい安心感を併せ持ち、現代のボルボ・ワゴンの原点ともいえる存在です。質実剛健なつくりと長く使える信頼性、そして家族を守る思想が詰まった一台として、今なお多くのファンに愛され続けています。